明治から昭和にかけてを知りたい人向けに、
「明治」という国家〈下〉
「昭和」という国家
と合わせどうかな、と思い手に取る、思ったより薄くて気軽に読める。
小栗忠順と勝海舟を明治国家誕生の父たちとして、薩長はかれら父たちの基礎工事の上に乗っかっただけと語る
小栗が建てた横須賀ドックがなければ日本海軍はもっと貧弱だったし、日露戦争の勝利などありえなかった
あのドックが出来上がった上は、たとえ幕府が亡んでも"土蔵付き売家"という名誉をのこすでしょう。
と粋なことを語る。
小栗は勝と異なり、徳川国家のために身を粉にして働いた。
両親が病気で死のうとしているとき、もうだめだと思っても、看病のかぎりをつくすではないか。自分がやっているのはそれだ
と語る。
逆賊になるのをおそれて逃げ出した徳川慶喜に
東海道を行軍する薩長軍を半ばで海軍兵力で分断する
と進言するも受け入れられない。
幕末〜明治の数少ない名将の大村益次郎もこれを聞いて、実現されていればかなり状況が違っていただろう、と振り返る。
徳川家とその家臣団に対して罪を問わなかった新政府が、小栗に対してはおそろしくて斬ってしまう。
坂本龍馬とかもそうだけど、小栗忠順も明治に生きていたらどういう構想をしたんだろうと楽しみな人。
他にも土佐についてや長州について、薩摩について、佐賀について、などをわかりやすく解説。
津田出、滝廉太郎、西園寺公望、ハリー・パークス、副島種臣、など、司馬さんの他の小説ではあまり触れられてない人にもスポットをあてる。
ただ、司馬さんは時代を語るより人物を語るほうが向いているようでおもしろい。
人に勧められるかどうかは下巻と昭和を読んで判断する。