私は今でも親から
「まわりも含めてみんながあんたのことを子供の頃はかわいいかわいいと言ってたのにいつからこんなかわいくないこになっちゃったんだろうねぇ」
と親からたまに言われますが、それは私が橘玲さんのファンだからが十中八九でしょう(苦笑
20代前半から好きな作家の一人に橘玲さんを挙げればそいつは小生意気なかわいげのないやつに決まっています
本書は文庫サイズで邪魔にもならないし、読んでない人は是非一家に一冊あったほうがいいと思う
唯一の欠点はもうすでに古いこと、大幅加筆修正とかしてくれないかなぁ、橘玲さんのことだから
「この利権国家では不幸にも本書を書いた時点からほとんど進展がなく、小規模加筆で充分でした」
とか言いそうだけど
さて、本書は
出版社の目次にある通り
第1部 不動産は人生にとってほんとうに必要か?
第2部 6歳の子どもでもわかる生命保険
第3部 ニッポン国の問題
第4部 自立した自由な人生に向けて
という構成
特に参考になるのは1と3
第1部 不動産は人生にとってほんとうに必要か?
・支払った代償の大きさが自分の判断を正当化する、不動産購入は宗教の入信と一緒で自己肯定するのは心理的に当然
・AさんとBさんがそれぞれ5,000万円あったとして、不動産を買うか有価証券を買うかはBS上一緒、むしろ不動産は取得と保持にコストがかかる
・不動産を買って住むのは自分で自分に家賃を払っていること
・所持金が1,000万だとして、片方が借入4,000万をして不動産を購入するのはまぎれもない信用取引
・「家賃を払うより金利を払って家を買ったほうが得ですよ」というセールストークは「自己資金だけで資産運用するより、借金して投資金額をふくらませたほうが有利ですよ」という意味
・信用取引なので当然不動産が上がれば買わなかった人より儲かる、下がればレバレッジ分損失を被る。バブル時取得者で実質債務超過の人は多い
・不動産の値段は本来収益還元法で決まる
不動産の還元価値 = 収益 ÷ 利回り
利回り5%なら
家賃10万不動産価値は 120万 ÷ 0.05 = 2,400万
不動産価値3,000万なら 3,000 × 0.05 =150万 なので月12.5万が相場となる
・欠陥住宅にも気をつけるべし
・競売物件はトラブルも多く、トラブルがない物件に集中すると結局相場並になる
・日本の借地借家権は借地借家人の権利を過剰に保護しているため長居されないように定期的に追い出す仕組みになっている
(家族向けでなかったり、2年に一回引越しを考えさせる更新料だったり)
・敷金はまだしも礼金や更新料に法的根拠はない、敷金だって無利息で持っていていいはずがないので運用情報を開示すべき
・不動産はビデオレンタルと同じレンタルビジネス、その点でも大家に感謝しろという礼金とは何だ?
・日本の賃貸住宅は借家権の家主側のリスクプレミアム分割高になっている、入居者に確実に出ていってもらえるよう、意図的に不快に設計されている
・このような借地借家権の乱用による不動産賃貸市場の歪み是正のために「定期借地権付住宅(定借住宅)」が導入された
・標準50年で更地にして土地を地権者に返す
例えば、賃料収入250万/年、還元利回り5%の不動産価格は5,000万
定借であれば
借地期間 収益還元価格 割引率
所有権 5,000万 0%
50年 4,560万 8.8%
40年 4,290万 14.2%
30年 3,840万 23.2%
20年 3,120万 37.6%
10年 1,930万 61.4%
1年 240万 95.2%
となる。ただしまだ日本では所有権が重視されているため50年の借地権は実際には40%程度割り引かれる。
不動産神話によってもたらされた心理的な所有権プレミアム
・同様に、定期借家権も20~30%同種の賃貸物件よりも安くなっている。(借家権のリスク・プレミアム)
・夏目漱石の作品をみるとわかるが明治はみな賃貸だった、所有が重視されるのは今の時代だけでは?
第2部 6歳の子どもでもわかる生命保険
は、生命保険は自分が不幸になるほうにかける宝くじだよねー、という内容
第3部 ニッポン国の問題
も、年金と医療保険にあまり自信がないひとは必読
・国民年金を確信犯的に払わない人がいるが
-サラリーマンの厚生年金報酬比例部分からずさんに流用され補填されている
-財源が消費税の一部であれば払った分だけ損になる
という点で払ったほうがいい
・橘さんが絶対にうまくいかない厚生年金基金、と言い切ったようにその後ゆっくりと終了させることになった
・40年間保険料を納めた基礎年金の給付額は夫婦2人で13万円、一方で生活保護は夫婦2人で14万円><
・未納問題なんて基礎年金の税方式かで一緒解決する、厚生年金の報酬比例部分を別にする、そうすると公営である意味がなくなるので民営化する
・これをしてしまうと社保庁が要らなくなるので必死に抵抗している
・財務省も年金が福祉目的税になると消費税が自由に使えなくなるから反対している、恐ろしい亡国行政
ただし私はこの方針には大いに疑問、資本主義は参加者が無駄遣いをすることが潤滑油なのに消費を懲罰してどうするんだろうと前から思っている
消費しないで溜め込んでいる人に資産課税したほうが成熟社会には合っていると思う、消費税0
・国営保険会社のもうひとつの主力商品健康保険も日本人であれば強制加入
・1974年は5.4兆円、毎年1兆円増えてその医療費の1/3が高齢者医療に支払われている、高齢者が毎年70万人増えているため
・ビジネスチャンスのある毎年1兆円拡大する市場だが国営生保の管理下にあり市場が歪んでいる
・国民皆保険を実現したことによりブラックジャックのようなお金を出しても良い治療を受けたいというニーズには答えられなくなった
・著者2010中流階級消失
">は田中勝博氏のイギリス人の奥さんの事例を紹介、日本では余命半年と宣告されたもののイギリスのプライベートホスピタルを選びQOLも上がりすっかりよくなった
・田中氏は毎月5万円程度の保険料を払って、「世界中のどこにいてもどんな病気に対してもまたどんな治療を受けても家族全員に全額医療費が支払われる保険」に入っていたのですべて保険で賄えた
続編の目次、もちろんオススメ
念の為、冒頭の「いつからかわいくなくなった」は親の冗談です
親とか本読めといっても読まないし、不動産のこととか話しても向こうが不愉快になるだけなのでもはやそういう話はしませんが
・おとんおかん世代は不動産を買って正解の確率が高かったから別にそれを否定してるわけじゃないよ
・今は不動産の目利きができるか運がいい人じゃないと正解かどうかはわからない、リスクが高いよ
・首都圏は下がらないだろうけど、住宅取得ニーズのある層の人口という需要は減って、新しく供給はちょいちょい増えてるんだから上がるのは想像できないなぁ
・僕は慎重派なのでそんな信用取引はせずに現物で投資をするよ、でも若いうちにだいぶ失敗したよw
・お金がどうこう言うつもりはないけど、家買ったきょうだいには祝い金をあげて賃貸の人にはあげない、というのはおかしいよ、僕が信用で株取引しても祝い金はくれないでしょ
・税金や保険年金の制度に詳しくないから搾取されるんだよ、僕が詳しいから適当に一番いいように手伝ってあげるよ
とかいうだけで親としては理解ができずに
かわいくないガキだ、ムキー
となるわけです(笑