月曜日, 7月 05, 2010
翔ぶが如く〈3〉
翔ぶが如く三巻
岩倉具視と大久保利通、および司馬遼太郎がしつこいぐらいに無能といいきる三条実美を中心とする反征韓論派との戦いに敗れ、軍隊を抑える最高権力者から一転辞表を提出し薩摩に帰ってしまう西郷。
そして桐野利秋をはじめ、西郷を先生と仰ぐ薩摩出身の近衛兵、警察官たちは西郷を追って郷里に戻ってしまう。
この頃はまだ天皇という存在は一般にはなじみが薄く、大東亜戦争にいたるまで勅令という習慣を大久保が作り山県有朋が頻発した。そういった経緯もあり西郷はともかく近衛兵や警察官達は天皇に背くという事実よりも西郷をしたって帰郷した。
また、韓国ではもちろん悪評価の征韓論ではあるが、西郷の中では理路整然としている。
ロシアというひたすら東進南進する性癖をもつ国家からアジアを守るためには、先に近代国家を築き始めた日本が韓国ひいては中国に革命を輸出して一丸となりロシアにあたるしかない、という主張だった。
大久保は
そうだとしても今は国家財政的にも戦争などできる状況にない
となんとか征韓論回避に動く
幼馴染同士が国家を運営するということは有史以来、この大久保と西郷をおいてないのではないか、と司馬遼太郎は書く
国へ帰るという西郷の言葉
「一蔵どん、おいはくにへ帰っど
怒らんでもよか
あとのことはよろしゅう頼みやげ申す
」
に対し大久保は
「それは吉之助どん、おいの知ったこつか。いつでもこうじゃ。
いまはちゅう大事なときにお前さぁ逃げなさる。
後始末はおいせなならん、もう知ったこつか。」
他の場面でも煮詰まって自分の主張が認められないと突然逃避してしまうという前科をもつ西郷に対する怒り、決別を意味する哀しみがこめられている。
この後の「さきほどのお言葉、あれではちょっとひどすぎるように思いましたが」という伊藤に寂しげに「私もそう思います」と小声で応えるのも大久保らしい。
これが西郷と大久保の永遠の別れとなった
★★★