この巻の主役はディオクレティアヌス
amazonのレビューで
組織論とかリーダー論的な洞察力は衰えていないが
人物の性格に関する描写力は明らかに衰えている
「品格を重んじたティベリウスにはユリアの品格の低さが我慢できなかったのだろう」とか
「アウグストゥス自身が誰にでも心を開く人ではなかった」とか
そのくらい颯爽と想像力を働かせて鮮やかに人物を書き綴って欲しい
とあったが、塩野さんはおそらくハンニバル/カエサル/アウグストゥスを書きたかった気持ちが強くそれ以外は枝葉だったのかと想像
本文のどこかにも書いてあったが
「もはやローマとは言えないので筆を置いてもいいのだが、愛する人の末路まで付き添うのもまた人情」
と書かれていた。そのような視点で見るべきかと思われる。
さて、ディオクレティアヌス
組織として制度疲弊していたローマを立ち直すために力を尽くす
この当時のローマ皇帝は本当に名誉職
終身制だったので不満を持たれたら「任期を終わらせるにはつまりこの方法しかない」と亡き者にされることも多かった
ローマが広大になったこともあり、蛮族と呼ばれる「ローマ化されていない部族」から攻め込まれることが多くなる
その解決策としてディオクレティアヌスが取った手は
「分けて統治する」
まずは帝国を西方と東方に二分割、そして数年後には
・西方正帝
・西方副帝
・東方正帝
・東方副帝
と帝国を4分割する
このあたりは責任を明確にして統治するカンパニー製などに近い意図か
確かに責任を明確化したことにより、蛮族から帝国がおびやかされることはなくなったものの、ごく少数の例外を除いて、お互いに軍の貸し借りはなかったことから軍に関わる人数が膨大になっていく
また、共通で持てていた機能が4分割されたことから官僚機構も肥大化していく
結果として、帝国全土の税金が肥大化していった
以前は税の種類にもよったが、シンプルに10%などであった税が複雑化/高率化していく
結果として民達のフラストレーションも高まっていく
★★★