月曜日, 6月 27, 2011

花神〈上〉



昔サラリーマンをやっていた時に私の部署で長いこと一緒に働いてくれていた司馬遼太郎好きに
「司馬遼太郎の中で何が一番好き?」
と聞いたら
「花神ですね」
というのでそれを覚えていて今さら読む

現代の日本陸軍の礎を作ったと言われる大村益次郎(村田蔵六)
Wikipediaにも載っている似顔絵の額は本物か?w

昔は藩や幕府に雇われているような場合を除き、医者は特に高い地位ではなかった
勝手に開業して上手ければ流行るし、という具合
大村益次郎も下層の生まれながら家業である医を志すために勉学に励んだ
当時医を学ぶためには蘭語は避けて通れないものだった

幕末に近い頃、すでに英語が世界では主流になっていたものの、幕府が針の穴ほどの窓を開けていたのがオランダであり、その窓から世界を見るのが当時の洋学だった
大村益次郎は師匠として緒方洪庵のものにつく、緒方洪庵は、本人よりも弟子たちの顔ぶれがすごいね

故郷、長州の田舎に帰って医を開業するもののコミュニケーションが円滑でなくうまく行かない日々が続く
大村益次郎のコミュニケーション能力については誰もがわかり易い例と思うのが
日本、特に田舎はあいさつで成り立っているのにも関わらず
夏に、「暑いですね」
と挨拶されると
「夏は暑いのが当たり前です」
と返す。
大村益次郎にとっては言葉とは意味の有ることを伝達する手段なのでわかっていることをわざわざ口にする意味が分からない、とのこと

さすがにそんなことは言わないけど、理系としてはわからなくもないんですけど(苦笑

悶々とした毎日を送る中、伊達宇和島藩に雇われる
これが、一介の田舎医者が有数の軍事家になるという転換点になる
宇和島藩の依頼は医学ではなく、砲術や艦隊などの軍隊について
蘭語で書かれた書物を翻訳して吸収していくうちに詳しくなっていく

花神の主題は技術
大村益次郎は超現実主義者で
「がたがた話している暇あったら技術的に実現したほうが早い」
「自分は技術者、技術で証明するからめんどくさい話はするな」
という性格。

宇和島藩で結果を出していたので幕府にも目をつけられ雇われる
当時としては破格の待遇、下層階級から大名ぐらいの地位までいきつく

が、長州が大村益次郎の力を欲しいというため長州の雇われとなる
当時の洋学のトップグループに位置していたものの、生粋の日本人/生粋の長州好きであったため
洋学という道具を通じて学問することとバタ臭くなることとは別であり、当時の長州連中と同じく攘夷思想を出し中巻に続く

さすが司馬さん、盛り上がりの伏線の役割である上巻の時点でもう面白くなりかけ

★★★★